がんの子どもすべてに質の高い医療の提供をめざし、経済的、社会的な負担を軽減する対策をとりつつ、診療実績のある病院にがんの子どもを集約させ、先駆的で安全かつ効果のある集学的治療を実践するとともに、子どもや家族が慣れ親しんだ地域でも安心して医療支援を受けられる環境の整備が進められてきました。その中心的役割を果たす病院が『小児がん診療拠点病院』です。
京大病院が小児がん拠点病院に選定された理由は、(1) 集学的診療の実践、(2) 難治・再発例の豊富な経験、(3) 院内学級、長期フォローアップ、緩和ケア、地域連携、相談支援などの体制や長期滞在施設の整備、(4) 専門的な医療従事者の十分な確保と育成、(5) 新しい治療法の開発(臨床研究)などにおいて、今までの成果が認められ、今後さらに発展すると評価されたからです。
小児がんの子どもと家族は可能な限り慣れ親しんだ地域で、他の子どもと同じ生活・教育環境の中、標準的な医療を受けられるとともに、治療困難時には安心して先駆的で高度な医療を受けられる環境が必要になります。そのような環境をつくるために、小児がん拠点病院である当院は、小児がん拠点病院間、及び近畿ブロック(近畿2府5県+福井県)のすべての府県に位置する病院と緊密に連携しています (地域連携)。
小児がん診療の進歩は近年著しく、一部の白血病はほとんど治癒できるようになりました。しかし、まだまだ治癒が難しいがんや治癒したものの後遺症が残る場合もあります。当院では、3つの理念を掲げ、全てのがんの子どもが後遺症なき完全治癒により充実した一生をおくれるように、病院、診療科、職種を越えた連携による集学的診療体制の整備や、新しい治癒法の開発を含めた治癒レベルの向上に努めてきました。
小児がんの種類によっては小児科だけでなく、脳外科、移植外科、放射線科などと連携し、先駆的で安全な治療を実践し、そのための専門医の確保・育成や新しい治癒法の開発も行っています。また、治療をより安全に、苦痛や不安をできる限り減らして行うために、看護師、薬剤師、臨床心理士などの多くの専門職が各々の立場から子どもをサポート。その他にも保育士やボランティア、教師などが家族とともに子どもの成長を見守り支えています。さらに、遠方からも安心して来院できるように家族のための長期宿泊施設も準備いたしました。このような診療体制の充実や環境の整備を通じ、高度で安全な集学的治療を安心して受けられる「小児がん診療拠点病院」として京大病院はこれからも進化していきます。
● 京都大学医学部附属病院小児がん診療の理念